I love you に代わる言葉
「そうだ! 日生くん、『I love you』を訳してみて下さい」
「な、なに急に……」
ボクは思わずドキリとした。しかもおねーさんの前で訳せと言うのか。おねーさんはニコニコしながら「いえ、夏目漱石で思い出して」そう言う。ボクはあぁ、と呟いた。
「『I love you』を、夏目漱石がどう訳したか知っていますか?」
「……『月が綺麗ですね』……だっけ。発想が凄いね」
何となく恥ずかしくて、それを隠すように淡々と告げれば、おねーさんはそんな事気にもせず嬉しそうに笑っていた。
「素敵ですよね。他にも、二葉亭四迷が『わたし、死んでもいいわ』と訳した、と言われていますね。それが真実でない、とも言われているみたいですが、どの訳にしろ、言葉自体はとても素敵だと思いませんか? それで、日生くんならどう訳すのかなって思って」
そう言われて、ボクは何故か真剣に考え込んでしまった。今のボクは、まだ恋というものを知ったばかりだ。そんなボクに出来るのは、直訳しかないだろう。現に今、何も思い浮かばないし、そもそも解らない。凄い発想だという事は理解しても、深い所まで解らないし、その訳で相手に『愛』が伝わるとも思えない。
「そーいうのよく解らないからさ、ボクには直訳しか出来ない」
ボクがそう言うと、おねーさんは数秒沈黙した。言葉を交わさぬまま、二人前を向いて歩く。ふと隣にいるおねーさんを見れば、おねーさんも此方を向いた。目が合うとおねーさんは笑う。だけどそれが何処か寂しそうで、けど、凄く温かかった。ボクから目を逸らして再び前を向くと、ゆっくりと口を開いた。
「な、なに急に……」
ボクは思わずドキリとした。しかもおねーさんの前で訳せと言うのか。おねーさんはニコニコしながら「いえ、夏目漱石で思い出して」そう言う。ボクはあぁ、と呟いた。
「『I love you』を、夏目漱石がどう訳したか知っていますか?」
「……『月が綺麗ですね』……だっけ。発想が凄いね」
何となく恥ずかしくて、それを隠すように淡々と告げれば、おねーさんはそんな事気にもせず嬉しそうに笑っていた。
「素敵ですよね。他にも、二葉亭四迷が『わたし、死んでもいいわ』と訳した、と言われていますね。それが真実でない、とも言われているみたいですが、どの訳にしろ、言葉自体はとても素敵だと思いませんか? それで、日生くんならどう訳すのかなって思って」
そう言われて、ボクは何故か真剣に考え込んでしまった。今のボクは、まだ恋というものを知ったばかりだ。そんなボクに出来るのは、直訳しかないだろう。現に今、何も思い浮かばないし、そもそも解らない。凄い発想だという事は理解しても、深い所まで解らないし、その訳で相手に『愛』が伝わるとも思えない。
「そーいうのよく解らないからさ、ボクには直訳しか出来ない」
ボクがそう言うと、おねーさんは数秒沈黙した。言葉を交わさぬまま、二人前を向いて歩く。ふと隣にいるおねーさんを見れば、おねーさんも此方を向いた。目が合うとおねーさんは笑う。だけどそれが何処か寂しそうで、けど、凄く温かかった。ボクから目を逸らして再び前を向くと、ゆっくりと口を開いた。