I love you に代わる言葉
「いつか……日生くんがそれを自分だけの言葉で訳せる日が来たら、大切な人……愛する人に、伝えたらいいかも知れません」
 今は、わからなくても。
 おねーさんはそう言った。
 ボクはじっとおねーさんの横顔を見つめた。
 おねーさんが紡いだ温かく強き台詞とその横顔を、黄昏がそっと、色付けた。ボクはこの台詞を、一生忘れないだろうと思った。いつかボクも、その意味を理解する日が来るんだろうか。ボクだけの言葉を言える日が、来るんだろうか。……解らない。だけど多分、ボクがそれを見付け出した時、その日もきっと、今隣にいる人をボクは想っているだろう。だから、伝える人は――……。
 ……それはその日までの、秘密だけど。
「……おねーさんならどう訳すのさ。ああ、今おねーさんが言ったみたいな、誰かに向けてじゃなく、ただ訳すだけでいいよ」
 視線を地面に向けながら尋ねる。おねーさんは少し思考を巡らせた後、少し顔を上げ、たった一言呟いた。



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