I love you に代わる言葉
14話 慈悲と罪~ジヒ ト ツミ~
 夏休みも三分の二が過ぎ、盆を明日に迎える。明日から四日間、今井の弟が帰省するらしく、家族で墓参りに行くとの事だ。
 今日、ボクは今井の家を出て、シンの家に行く。シンの家に移住するという事だ。
『弟の事なんか気にすんなよ。まだこの家に居ていいんだぜ?』
 今井にそう言われた。
『日生くんが家を出る事ないんだよ』
 今井の母親にはそう言われた。
 少し迷ったが、ボクの意見は変わらなかった。ボクが此処に残れば、弟が困るだろう。今井の部屋で三人仲良く過ごすと言うのか? 夜はどうする。寝られる場所などない。かと言って、思春期真っ只中の中学生男子に、母親の部屋で一緒に寝ろとも今井も言えまい。今井の家には夏休みの間、と決めていたし、その休みもあと一週間ちょっとで終わる。今出た所で殆ど変わらない。急な決断で今井の母親には申し訳無いとは思うけど。
 親戚のにーちゃんが一人暮らしを始めたからそこで暮らす、と。今後の心配をさせぬよう、今井の母親には嘘を言っておいた。前の家に戻る事も、また友達の家に転がり込む事も、あまり良しとはしないだろうとボクは考えたからだ。
 今日からシンの家に住むのは、ボクにとっても今井達にとっても都合がいいと思う。シンは盆休みがあるらしいが実家に帰るのは面倒だと言っていた。
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