I love you に代わる言葉
「お前に礼を言われる日が来るなんてよ……何で最後にそうやって感動の台詞を言ったりそーやって笑顔見せんだよ……! お前、楽しそうに笑うの初めてじゃねーかっ……」
 それを聞いて、ボクは笑みを消した。
 ……確かに、こんな風に笑うのは初めてかも知れない。いや、でもさ。
「アンタ大袈裟だな。二度と会わない訳じゃないだろ」
「そうだけどよ……意外と楽しかったからよ。これから俺一人になるんだと思うと、これがまたけっこー寂しいんだよ……」
 こっちが恥ずかしくなるくらい、真っ直ぐ告げてくる。
「学校始まれば嫌でも会うだろ」
 しかも毎日。同じクラスだし。嫌でも顔を見る。
「アンタには弟もいるしね」
 恥ずかしさを隠すようにぶっきらぼうに言い放つと、そうだけどよ……と肩を落としながら今井は呟く。
 解っているんだ、こいつの言いたい事は。弟が居るとか、多分関係無い。そういう問題じゃないんだろう。こいつの感情を汲み取ってやる事が出来ても、ボクはこいつと同じようには言えない。
 ボクは小さく溜息をついた。
「土日はこっちに来るさ。アンタの母親にもそう言っといて。あんなに良くしてもらったのに何も返せてないしさ」
「お前変わったな……! 俺は嬉しいぜっ……!」
 今井はそう言って感動している。誰だよアンタ。ボクの何なんだ。
「はいはい。じゃ、そろそろ行くから」
 ボクはそう言って今井に背を向けた。もう振り返る事は無かったから、今井がどんな表情をしているのかは解らなかったけど、背中で受け止めた「じゃあまたな」の一言は、とても温かいものだった。



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