I love you に代わる言葉


 シンの家の最寄りバス停で降りると、そこにはシンが居て驚かされた。到着予定時刻を予めメールで伝えていたが、まさか此処に居るとは思わなかった。てっきり家で客人を迎える準備でもしているのかと思ったが、此処にいるという事は、別の理由があるのかも知れない。
「よぉ」
 シンに近付くと、軽い挨拶をされた。
「何してるのさ、こんなとこで」
「ああ、荷物が多くて困ってるんじゃねぇかと思ったんだが……思ったよりねぇな」
 シンはボクの鞄とスポーツバッグを見ながらそう言った。それを聞いてボクは僅かながら驚いた。こいつ本当に色んな事に気の付くヤツだな……。
「無い方ではあるね。でもこの暑い中これを運ぶのは流石にダルかったよ。学校に持ってった時に比べればマシだけどね。今日は殆どバス乗ってただけだったし、変な視線も浴びないし」
「あぁ、あの時か」シンは苦笑した。「あの時はやけに多い荷物に対して突っ込むべきか迷ったな。親しくもねぇし結局やめたけどな。――貸せよ。一つ持ってやる」
 そう言われ、ボクはわざとスポーツバッグの方を差し出してみた。シンはぷっと吹き出し、
「そっちかよ」
 と突っ込みを入れてきた。それが何だかおかしくてボクは笑みを漏らした。
「冗談」
 そう言って通学鞄を手渡せば、日生からそんな発言があるとはな、と言ってシンは笑った。
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