I love you に代わる言葉
「……あれ?」
おねーさんは箱の側面を見つめながらそんな声を出した。
「え、なに?」
「箱に何か赤いものがついてます……血、かな? 日生くん何処か怪我してませんか?」
尋ねられ、ボクの心臓がどくんと跳ねた。――しまった……さっき破片で怪我した所、ティッシュで軽く拭いただけだったんだ。深い傷じゃなかったからまぁいいかと放置したのが災いした……!
「ああ……さっき手を切ったんだ。別に大した事ないよ」
冷静さを繕うけど、背中には汗が滴る。
「大丈夫ですか? だけど何処で怪我を……?」
ボクを心配する優しい声。だけどおねーさんの顔を見られなくて、問いにも答えられなくて、ボクは口を噤んだ。尤もな問い。特に何もしてなかった奴が何で怪我するんだと普通は思う。
妙な沈黙が訪れた。おねーさんはきっと、訳が解らなくて困っている筈だ。
今、言うしかない。
ボクはおねーさんに気付かれぬよう小さく息を吐くと、覚悟を決めた。けど、
「手を、見せて下さい」
先におねーさんが沈黙を破った。鳥が空から羽根をひらひらと落とす如く、綺麗で優しい声が舞い降りた。ボクは無言で右手を差し出す。そして手の平を見せた。二箇所小さな切り傷がある。が、深くはない。血が滲んできているだけのものだ。
おねーさんは傷を見た後、
「私の部屋に塗り薬があるので、持ってきますね」
そう言った。部屋に行けば気付かれる。ボクは部屋を出ようと背中を向けたおねーさんを呼び止めた。
「――……ゴメン」
という訳の解らない一言を放って。
おねーさんは箱の側面を見つめながらそんな声を出した。
「え、なに?」
「箱に何か赤いものがついてます……血、かな? 日生くん何処か怪我してませんか?」
尋ねられ、ボクの心臓がどくんと跳ねた。――しまった……さっき破片で怪我した所、ティッシュで軽く拭いただけだったんだ。深い傷じゃなかったからまぁいいかと放置したのが災いした……!
「ああ……さっき手を切ったんだ。別に大した事ないよ」
冷静さを繕うけど、背中には汗が滴る。
「大丈夫ですか? だけど何処で怪我を……?」
ボクを心配する優しい声。だけどおねーさんの顔を見られなくて、問いにも答えられなくて、ボクは口を噤んだ。尤もな問い。特に何もしてなかった奴が何で怪我するんだと普通は思う。
妙な沈黙が訪れた。おねーさんはきっと、訳が解らなくて困っている筈だ。
今、言うしかない。
ボクはおねーさんに気付かれぬよう小さく息を吐くと、覚悟を決めた。けど、
「手を、見せて下さい」
先におねーさんが沈黙を破った。鳥が空から羽根をひらひらと落とす如く、綺麗で優しい声が舞い降りた。ボクは無言で右手を差し出す。そして手の平を見せた。二箇所小さな切り傷がある。が、深くはない。血が滲んできているだけのものだ。
おねーさんは傷を見た後、
「私の部屋に塗り薬があるので、持ってきますね」
そう言った。部屋に行けば気付かれる。ボクは部屋を出ようと背中を向けたおねーさんを呼び止めた。
「――……ゴメン」
という訳の解らない一言を放って。