I love you に代わる言葉


 それから僅か三十秒程で煌宝へと到着する。
「あらおかえり花恋ちゃん。遠いのに本部までありがとう」
 煌宝へ到着してまず驚いた。店長ってあの無愛想なオバサンだったのかっ。しかも何だよこの喋り方。人を見た目だけで判断していいのなら、この顔は絶対に本部まで行くのを押し付ける顔だ。本部とやらが何処かは知らないが、まぁ近くはないのだろうと予想はつく。
 関係ないが、おねーさんの名前は『花恋』というのか。名字はネームプレートを見て知っていたけど。
「いえ、いいんですよ。そこまで行くのも気分転換になりますから」
 そう言ったおねーさんにオバサンは微笑み、後ろにいたボクに視線を移した。バッチリ目が合う。
「おや、その子は……」
「はい。例の子です」
 例の子と呼ばれボクは鼻で笑う。ちょっとした有名人みたいだ。当たり前か。
「……何」
 オバサンが向ける遠慮のない視線にボクの眉が寄る。少々不愉快だったから低い声が出た。口を開いて何かを言うとすれば、きっと万引きの事だ。おねーさんに対しては優しくても、流石に万引常習犯を目の前にすれば、説教の一つや二つ言いたくなるだろう。だけど、発せられた言葉は予想外のものだった。
< 24 / 415 >

この作品をシェア

pagetop