I love you に代わる言葉
日生くん。
とくん、と。
まただ。また、言い様の無い感情が全身を巡る。それはまるで蒸気の様にゆっくり吹き上げる、だけどそれが何なのか解らない。振り払いたい様な、ずっと感じていたい様な、言葉に出来ないそれ。何ともむず痒くてやっぱり振り払いたくなった。
「――おねーさん、さっき何言いかけたの?」
振り払いたくなったから。感情に目を向けたくなくて口を開いた。それで思う様に事を成し得たのかは疑問だけれど。
「ああ、あのアメシストどうされたのかと気になって。それを聞こうと――」
「あれなら部屋に飾ってるよ」
そう言うと、二人は驚いていた。けれどその直後、ボクが想像していた通りの笑顔を、おねーさんは見せた。オバサンと顔を見合わせて微笑んでいる。オバサンなんて「あんた思った以上にいい子じゃないか」なんて言ってバシッと肩を叩いてくる始末だ。馴れ馴れしいオバサンの態度に苛立ちながらも、嫌じゃないかも知れないと思う自分が何処かに居る。
言い様の無い感情。ボクの知らない感情。これは感情か感覚か。それすらも解らない、知らない。だけど、知らないのならこの感情に新しく名前を付けてもいいだろうか。
温かい、と。