I love you に代わる言葉
「――ふーん。この汚い色の石、ラブラドライトっていうんだ」
以前来た時から汚くて価値の解らない石だった。角度を変えると光る様が黄金虫を思わせる。
あれから結局、確実に二十分は二人から石の説明を受けているんじゃないだろうか。時折談笑が挟まれるが。興味が無いから適当に聞き流すけど、その石には何故か反応した。汚いから印象に残っていたのかも知れない。
ボクは直径二十センチはあるだろうそれを手に持った。やっぱり石だな。ズシリと重みを感じる。
「どういう原理で光るのさ、これ」
「これは内部の層が関係しているみたいですよ。確か……曹長石(そうちょうせき)と灰長石(かいちょうせき)からなる薄い層が交互に重なり合って、その構造によって光の干渉が生じるのだとか……原理を頭で理解しても石を開いて見る事は不可能ですから、私達も“そういう構造なんだ”としか理解出来ていないんです」
「あんたが言うその“汚い色”は、結晶の内部にある不純物の所為だと言われているよ。それが全体の色彩を暗くするみたいだね。それで光がより一層輝くんだ」
「ふーん……」
「その光の現象を“ラブラドレッセンス”と言うんですよ」
――……光。
淀んだ汚い色に浮かび上がる光。この石は、ボクそのものだ。だから一番に目に止まって“汚い”と感じたんだ。
ボクは手にしていた石を置く。ゴトッと鈍い音がした。
「――……ボク、この石嫌いだ」
「そうかい? 知れば知る程奥深くて綺麗だけどねぇ」
「そうですね。『蝶の羽』と例えられていますし、神秘的です」
言われてみれば確かにアゲハ蝶の様に見えなくもないな。
「そういえば花恋ちゃんのしてるペンダントもラブラドライトだねぇ」
「はい」
それを聞いておねーさんのペンダントを見た。店のライトに反射して胸元でキラキラと光っているそれは確かにラブラドライトだった。そんな所に目が行かなかったから気付かなかった。
「……おねーさんはその石好きなんだ?」
「はい」
「何で?」
おねーさんはペンダントを優しく掴み、それを見下ろしながら微笑む。そしてゆっくりと丁寧に言葉を紡ぐ。
以前来た時から汚くて価値の解らない石だった。角度を変えると光る様が黄金虫を思わせる。
あれから結局、確実に二十分は二人から石の説明を受けているんじゃないだろうか。時折談笑が挟まれるが。興味が無いから適当に聞き流すけど、その石には何故か反応した。汚いから印象に残っていたのかも知れない。
ボクは直径二十センチはあるだろうそれを手に持った。やっぱり石だな。ズシリと重みを感じる。
「どういう原理で光るのさ、これ」
「これは内部の層が関係しているみたいですよ。確か……曹長石(そうちょうせき)と灰長石(かいちょうせき)からなる薄い層が交互に重なり合って、その構造によって光の干渉が生じるのだとか……原理を頭で理解しても石を開いて見る事は不可能ですから、私達も“そういう構造なんだ”としか理解出来ていないんです」
「あんたが言うその“汚い色”は、結晶の内部にある不純物の所為だと言われているよ。それが全体の色彩を暗くするみたいだね。それで光がより一層輝くんだ」
「ふーん……」
「その光の現象を“ラブラドレッセンス”と言うんですよ」
――……光。
淀んだ汚い色に浮かび上がる光。この石は、ボクそのものだ。だから一番に目に止まって“汚い”と感じたんだ。
ボクは手にしていた石を置く。ゴトッと鈍い音がした。
「――……ボク、この石嫌いだ」
「そうかい? 知れば知る程奥深くて綺麗だけどねぇ」
「そうですね。『蝶の羽』と例えられていますし、神秘的です」
言われてみれば確かにアゲハ蝶の様に見えなくもないな。
「そういえば花恋ちゃんのしてるペンダントもラブラドライトだねぇ」
「はい」
それを聞いておねーさんのペンダントを見た。店のライトに反射して胸元でキラキラと光っているそれは確かにラブラドライトだった。そんな所に目が行かなかったから気付かなかった。
「……おねーさんはその石好きなんだ?」
「はい」
「何で?」
おねーさんはペンダントを優しく掴み、それを見下ろしながら微笑む。そしてゆっくりと丁寧に言葉を紡ぐ。