I love you に代わる言葉

　ザアァァァと降り続ける雨の音を何処か遠くに聞きながら、ボクは、ぽつり、ぽつり、言葉を紡いだ。
「ボクの家で、今井と居る時にも、さ……あいつ……来たんだ……」
　何を、言っているんだろう、ボクは。
　おねーさんはこの話を知っているんだろうか。何処まで、シンから話を聞いたんだろうか。
　おねーさんが此方を見た気配がした。おねーさんは何も言わず、黙ってボクの言葉に耳を傾けている風だった。
「ボクは、あの女が、ひたすら憎かった……昔から、ずっと」
「……」
「死ねばいい、とか、刺してやりたい、とかさ……腹の底から思う一方で……、」
　嗚呼、何ヲ、言ッテイルンダロウ、ボクハ。
「あいつが現れた時、さ……家に一人でいるボクを、心配して……来てくれたんだったらいい、なんて、淡い期待も、何処かでしたんだ……ははっ……『あんた、生きてたんだ』って、言われたけどね」
　嗚呼、何ヲ、言ッテシマッタンダ、ボクハ。
　忘れらない、言葉。忘れたくて仕方の無い、残酷な言葉。やっぱりボクは要らなかったんだと、否が応でも再確認させられる言葉だった。生きてきた事を後悔した、言葉だったんだ。