I love you に代わる言葉
「……アンタが本気であんな事を思って言ったんじゃないって、解ってるさ。だから、べつに……謝罪は要らない」
「だが、口に出した事は事実だからな」
 シンはそう言って申し訳無さそうな色を浮かべながら、苦笑した。
「それはボクの感情を引き出す為だろ。結果ボクはアンタのお陰で楽になれたし……だからいい。それに、アンタの言った事は正しいしね。みんなが心に秘める批難の言葉を、アンタが代弁したに過ぎない」
「何か日生らしくねぇな。……まぁ、そう言って貰えると助かる。……サンキュ」
 そう言うと、シンには珍しく照れたような表情をして、口元を僅かに綻ばせた。目尻もほんの少し垂れたように見えた。鋭利さのあるつり目でありながら冷たく意地が悪く見えないのは、恐らく、こいつの温かい心がそうさせているんだろう。
 ボクはシンの左頬を見た。まじまじと見ると、何となく腫れあがっているように見えるが、想像より腫れていなくて心底安堵した。それでも顔に傷付けた事が酷く申し訳無くて、ボクはそれから目を逸らした。
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