I love you に代わる言葉
「それよりこいつは何なのさ」
ボクはそう言って今だ熟睡中の今井に目を向けた。声を落としているとは言え、近くでペラペラ喋られてよく目を覚まさないもんだな。シンはボクの目線を辿って同じく今井を見た。シンは一言、見た通りだ、そう言った。なるほど、この上なく解り易い説明だ、とボクは思った。
「おねーさんは? まだ寝てる?」
「多分な。起きた気配がしねぇからまだ寝てると思うぜ。何か用があるのか?」
「ああ、……ちょっとね」
「そうか」
「起きたら教えて。それまでボクは部屋にいる」
ボクはそう言って再び部屋に戻ろうとしたが、ふと、此処でまたとある人物の名が頭に浮かんだ。ボクはシンを振り返り声を掛ける。
「――ねぇ」顔を上げたシンに、ボクは問うた。「『ケンヤ』って、誰?」
自分の声が、低くなった気がした。それだけは、理解出来た。無意識にその名に対し、羨望や嫉妬、嫌厭の情をボクは抱いていたのかも知れない。おねーさんの口唇から囁かれた、呼び捨てにされた、名前。
シンはボクを射抜くように見た後、そっと目を伏せ、
「ねーちゃんの、元彼だ」
とても落ち着いた口調で言った。
「――だと、思ったけどね」
ボクはそれだけ言って、シンの部屋に戻った。
あとは、おねーさんが起きてから直接聞けばいい。今日も仕事なんだろうか? まぁいいや。時間がある時に聞けばいい。
シンの言葉はボクの予想に反しないもので、また随分とお約束だな、とこの現状に嘲笑した。
ボクはそう言って今だ熟睡中の今井に目を向けた。声を落としているとは言え、近くでペラペラ喋られてよく目を覚まさないもんだな。シンはボクの目線を辿って同じく今井を見た。シンは一言、見た通りだ、そう言った。なるほど、この上なく解り易い説明だ、とボクは思った。
「おねーさんは? まだ寝てる?」
「多分な。起きた気配がしねぇからまだ寝てると思うぜ。何か用があるのか?」
「ああ、……ちょっとね」
「そうか」
「起きたら教えて。それまでボクは部屋にいる」
ボクはそう言って再び部屋に戻ろうとしたが、ふと、此処でまたとある人物の名が頭に浮かんだ。ボクはシンを振り返り声を掛ける。
「――ねぇ」顔を上げたシンに、ボクは問うた。「『ケンヤ』って、誰?」
自分の声が、低くなった気がした。それだけは、理解出来た。無意識にその名に対し、羨望や嫉妬、嫌厭の情をボクは抱いていたのかも知れない。おねーさんの口唇から囁かれた、呼び捨てにされた、名前。
シンはボクを射抜くように見た後、そっと目を伏せ、
「ねーちゃんの、元彼だ」
とても落ち着いた口調で言った。
「――だと、思ったけどね」
ボクはそれだけ言って、シンの部屋に戻った。
あとは、おねーさんが起きてから直接聞けばいい。今日も仕事なんだろうか? まぁいいや。時間がある時に聞けばいい。
シンの言葉はボクの予想に反しないもので、また随分とお約束だな、とこの現状に嘲笑した。