I love you に代わる言葉


 ボクはシンのベッド上で、何をするでもなく、ただ仰向けに寝転がっていた。部屋に戻り小一時間経過したところで、扉がカチャリと開けられた。シンだ。
「起きたみたいだぜ。行ってこいよ。仕事は昼かららしいから、もう暫くゆっくり出来るんだと」
 それを聞き、ボクはムクッと起き上がりベッドから降りる。その動作を返事代わりにした。すぐにおねーさんの部屋に向かおうと今居た部屋を後にしようとしたら、
「『ケンヤ』さんの事を聞きに行くのか?」
 と、シンに呼び止められた。ボクは振り返ってシンを見たが、返事はしなかった。無言を肯定の意と捉えたらしいシンは、ボクから視線を外すと、伏し目がちにフッと笑った。
「――なら、俺は部屋で待機しとくかな」シンはそう言うと、またボクを見た。「どういう経緯でねーちゃんがその名前を日生の前で出したのかは知らねぇが、出したからには答えるしかねぇだろうな。話し終えたら俺に知らせてくれ。……自分では話せねぇ事もある筈だからな、俺が補足してやる」
「おねーさんに、自分では話せない何かがあるって事?」
「そういう事だ。いいから早く行ってこい」
 シンはそう言ってボクを送り出すと、部屋の中に入りバタンと扉を閉めてしまった。いまいち意味を掴めなかったが、ボクはおねーさんの部屋へ急いだ。――早く知りたい、それだけがボクの心を占めていた。
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