I love you に代わる言葉
 おねーさんは片手に本を持ち、子供にも母親にも石についての説明をしているみたいだった。
「……おねーさんって人気なんだね」
 ポツリと呟いた。接客している姿を見たのはこれが初めてだったけど、子供がおねーさんを慕う姿を見れば解る。
「大勢のお客さんが来る訳じゃないから『人気』という表現が正しいのかわからないけど、花恋ちゃんは優しいから、子供とお年寄りに凄く好かれてるよ」
 オバサンはカウンターに腰を曲げて頬杖をつきながら、優しい眼差しをおねーさんに送っていた。
 というかアンタ店員だろ。曲がりなりにも店長だろ。店に立つ者がそんな姿勢でいいわけ?
 呆れた視線を送るボクの感情など知る由もないのか、目が合って無意味にニコリと笑われた。
 小さく息を洩らし腕を組む。
 子供の目線に合わせてしゃがみ込んでいるおねーさんの、楽しそうな笑い声が聞こえた。



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