I love you に代わる言葉
18話 貴女に捧~アナタ ニ ササグ~
 残暑は続くものの、もうすっかり秋を感じさせる、九月も中旬に差し掛かる頃、ボクは例の雑貨屋に、今井と来た。理由は言うまでもなく、以前シンと見た天使の置物を購入する為だ。
 今日は土曜日。土日は基本今井の家に行く事にしているから(家を出る時約束したしね。それを反故にする訳にはいかない)、自然とこの組み合わせになる。この店に一人で来るのは躊躇われた為、シンか今井を誘うつもりではいたが、ボクが声を掛けずとも今井は勝手についてきた。
「お前どうしたんだよ!? 用事ってここにか?! 何でお前がこんな店に来るんだよ!? 以前と変わったのは嬉しいけどよ……こんな乙女な趣味はお前のキャラが許さないからやめとけ!」
 到着直後の、愕然、というか、驚愕、というか、そんな感情を含む今井の台詞。行き先を告げなかった為に、こういう反応になったんだろう。やたらデカイ声で放った、勘違いも甚だしい台詞。着飾った若い女二人が、訝しげに此方を見た。今とてつもなく大きな誤解が女達に生まれたんじゃないだろうか。
「おねーさんの大事なものを壊しちゃったからその侘びとして買いにきただけだ」
 冷ややかな視線を送りながら、ボクは言う。
「そ、そうだよな……」
 今井は安堵感に包まれた表情で言うと、以降は静かになった。
< 316 / 415 >

この作品をシェア

pagetop