I love you に代わる言葉
「で、どんなの買うつもりなんだよ?」
 店内に入ると、今井は居心地悪そうにキョロキョロとしながら、尋ねてくる。その様子から察するに、今井もこういう店は初めて入るんだろう。身の縮む思いであるのが、手に取るように解る。
「もう決めてある。――こっち」
 簡単に返事をし、ボクが一切の迷いを見せずとある方向に身体を向ければ、今井は驚いていた。歩き出すボクの後ろをついて歩きながら、前にも来たことあんのか? と尋ねてくる。
「ああ、シンとね」
「へぇ。しかし男二人でよくこんな店見付けたな」
「ここ、おねーさんの好きな店らしいからね」
「ああ、なるほどな。確かに好きそうだな~」
 背後を振り返り横目で今井を見れば、店内をぐるぐる見渡している今井が映る。のろのろ歩くこいつを無視して、ボクはスタスタと例のものが置いてあった場所へ急いだ。
 売り場は装飾が秋色に変化しているだけで、置いてあるものは以前と殆ど変わらなかった。目的のものは、数こそ減っているものの、そこに幾つか置かれていて、ボクはホッと胸を撫で下ろした。……良かった。売り切れだったら、と一抹の不安を感じていたから。
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