I love you に代わる言葉
 それを手に取ると、今井がやってきた。
「お。それか?」
「……まあね」
「何でそれなんだ?」
「なに、悪い?」ボクは軽く睨む。
「睨むことねーだろ……べつに悪かねぇよ。何でこんなに商品あるのにそれにしたんだろうな~って、そういう素朴な疑問だ」
「理由は色々あるよ」
「……そりゃそうだ。その理由を聞いてんだけどよ……」
 今井はぶつぶつと独りごちるが、丸聞こえだった。呆れた様子の今井にムッとしたから、
「いいだろ別に。アンタには関係無い」
 そうやって冷たく言い放ち、商品を手に持ったままレジに向かってつかつか歩いた。
「あ、おい!」
 背後から呼び止める今井の声が聞こえるが、面倒だから無視していれば、「教えてくれてもいいだろ~!」と喧しい今井の二言目が聞こえてきて、ボクは仕方なしにと足を止めた。
「おねーさんに似合うから、それだけ」
 他にも理由はあったけど、こいつに説明するのは面倒だったから簡潔に伝える。すると今井は、ふーん、とそれだけだった。何なんだこいつ、聞いておいてそれ?
 慣れない買い物。レジに持っていくのは酷く緊張した。贈り物かと尋ねられ、少しだけ照れ臭くなった。それを隠すように少し顰めっ面をしながら、ボクはこくんと頷いた。



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