I love you に代わる言葉
*
それから暫くして子供が何やら石を持ってレジへと向かってきた。邪魔にならない様僅かに身体を避けて、近くの壁に凭れて腕を組む。会計が済むまでじっと無言で様子を眺めていた。
小さな紙袋を嬉しそうに手に持ち、おねーさんに向かって手を振っている子供と、会釈する母親。二人は隣り合って微笑み合って歩き出し帰っていく。一連の行動を眺めて、おねーさんが本当に好かれている事、あれが本来の“親子”である事を理解した。そして「花恋ちゃんの客」という意味も同時に。
「おや、もうこんな時間か」
親子が帰ったのを見送った後、そんな声が聞こえた。振り向くと、オバサンがカウンター近くの壁に掛けられた時計を見ていた。その視線を追ってボクも時計を見ると、十四時を少し回っていた。
「花恋ちゃん、休憩に入ってもいいよ」
「はい」
「――じゃあボクは帰るよ」
組んでいた腕を解き、その手をズボンのポケットに突っ込んだ。
「せっかく来てくれたのに、あまりお話出来ませんでしたね」
おねーさんの整った眉が下がる。
「別にいいよ、仕事なんだし。ボクは暇潰しに来てるだけだから」
片手を上げてひらひらと適当に手を振って歩き出す。
「また来なよ。だけど学校はサボっちゃいけないよー」というオバサンの声が背中に掛かったけど、返事はしなかった。
それから暫くして子供が何やら石を持ってレジへと向かってきた。邪魔にならない様僅かに身体を避けて、近くの壁に凭れて腕を組む。会計が済むまでじっと無言で様子を眺めていた。
小さな紙袋を嬉しそうに手に持ち、おねーさんに向かって手を振っている子供と、会釈する母親。二人は隣り合って微笑み合って歩き出し帰っていく。一連の行動を眺めて、おねーさんが本当に好かれている事、あれが本来の“親子”である事を理解した。そして「花恋ちゃんの客」という意味も同時に。
「おや、もうこんな時間か」
親子が帰ったのを見送った後、そんな声が聞こえた。振り向くと、オバサンがカウンター近くの壁に掛けられた時計を見ていた。その視線を追ってボクも時計を見ると、十四時を少し回っていた。
「花恋ちゃん、休憩に入ってもいいよ」
「はい」
「――じゃあボクは帰るよ」
組んでいた腕を解き、その手をズボンのポケットに突っ込んだ。
「せっかく来てくれたのに、あまりお話出来ませんでしたね」
おねーさんの整った眉が下がる。
「別にいいよ、仕事なんだし。ボクは暇潰しに来てるだけだから」
片手を上げてひらひらと適当に手を振って歩き出す。
「また来なよ。だけど学校はサボっちゃいけないよー」というオバサンの声が背中に掛かったけど、返事はしなかった。