I love you に代わる言葉


 会計を済ませ、店外へ出る。直後にボクは、どっと疲労感が押し寄せ、大きく息を吐いた。こんな買い物も、店員とのラッピングがどうのというやり取りも不慣れで、無駄に手間取った気がする。やはりこういう場所は居心地が悪い。店内の内装や装飾、商品、そして店員にも特に文句なんて無いのだが、やっぱりいかにも女って感じの店はボクは苦手だ。
 雨は降っていないものの、空は薄暗く今にも降り出しそうな天気だ。さっきまで晴れていたのに一気に崩れたんだな。せめてカラッと秋晴れでもしていてくれればこの疲労感も少しは和らいだのに。
「これからどうすんだ?」
 もう一つ小さく溜息をついた時、横から今井が尋ねてきた。
「帰る」
「え!?」
 一言告げ、くるりと方向転換すると、今井から驚きの声が上がる。それを無視して、ボクは今井宅の方角に向かうバス停を目指し足を踏み出した。当然、今井はボクの後を追ってくるが、
「おい日生! もう帰んのかよ。どっか寄ってこーぜ、腹減ったし」
 そう言って引き止めようとする。
「昼ご飯食べただろアンタ。ボクは腹も減ってないし帰りたい」
 一応顔だけは向けてやるが、ボクは足を止めなかった。
「てかそれいつ渡すんだ?」
 今井はボクの左手にある小さな白い紙袋を指差しながら、そんな質問を投げ掛けてきた。こいつはまた話題をコロコロと……。
「別にいつでもいいだろ。遅くなり過ぎなければそれでいい」
「なら今日渡せよ」
 予想外の言葉に、ボクはピタッと足を止めてしまった。ほぼ同時に歩みを止めた今井に、ボクは冷たく言った。
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