I love you に代わる言葉


 古びたステンレス製の玄関扉を開けて、薄暗い家へと帰宅する。
 まだ昼時であるにも関わらず、リビングに差し込む光などない。遮光性の無いカーテンの為、そこから透けた光で今が日中である事はかろうじて解るが。
 無の空間など置き去りに隣の自室へ向かう。カーテンを開けて出たからリビングよりは明るさを感じるけど、それでも何処か味気なくて閑散としている。
 溜息一つ吐き出す事無くベッドへ座り込んだ。吐き出す溜息すら無い程、この家に感じる事なんかないんだ。
 視界の隅で何やらキラリと光った。顔を向けるとアメシストの結晶が、窓から入る日差しに反射してキラキラ光っている。それが何だか場違いに思えた。
 ボクはベッドに仰向けになって目を閉じた。



 ――……

 ――――……


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