I love you に代わる言葉
19話 上天の光~ジョウテン ノ ヒカリ~
 暗い部屋の中、ベッドの上に、ボクは頭の後ろで手を組み、仰向けに寝転んでいた。消灯からやや時間が経過している為、暗がりにはすっかり目が慣れ、天井の模様までもがハッキリと映る。
 時刻は深夜二時を回っているが、ボクはなかなか寝付けずにいた。もう九月の下旬だ、暑苦しい訳でもないし、寒過ぎる訳でもない。ましてや鈴虫の鳴く声が耳障りだという理由で寝付けない訳じゃない。ただ、目を閉じるのが、怖かった。正確には、明日(正確にはもう今日だけど)が来るのが怖かったんだ。
 明日――否、今日。
 今日は。九月二十六日は。


 ケンヤという男の命日だ。


 怖い、なんて。そんな感覚を覚えたのは人生で初めてだ。明日が来ればいい、だけど、来なければいい。胸を締め付ける得たいの知れぬモヤモヤを全て吐き出したくて、深く息を吐いた。
「――眠れないのか?」
 不意に、シンの静かな声が届く。ボクはハッとした。僅かに身を起こし、床に布団を敷いてそこに寝転んでいるシンを見れば、シンはベッド側を向いて横向きになっており、右腕を折り曲げそこに頭を乗せた恰好をしていた。両目はパッチリと開けられている。
「……起きてたのか……」
 驚いて、ボクはガバッと上半身を起こした。消灯してから数分、寝返りを何度も打っていたから起きているのは知っていたが、三十分もすると静かになったから、てっきり寝ているものと思っていた。
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