I love you に代わる言葉
「明日学校どうするんだ?」不意にシンが尋ねてきた。
「サボる。面倒だからね」
 即答すると、シンは苦笑した。
「俺も面倒だからサボるか。クラス違うから怪しまれる事もねぇしな」
「アンタがサボろうがボクには関係無いけどさ、墓参りに行く訳でもないのにサボって何するのさ」
 シンは目を閉じ、寝る、と短い返事をした。それに妙に納得させられ、確かにこいつ、サボる時はいつも寝てるなとボクは考えた。
「こんな日に授業に集中出来ねぇしな。日生の事も心配だし?」
 シンがそう言って不適に笑うから、まるでお子様扱いでもされたみたいな気持ちになり、ムカついて睨み返す。真面目な顔して喋った前半に少しだけボクも寂しい気持ちを感じていたのに、結局こいつはこういう形で締め括る。ボクは何も言わなかったが、わざと不機嫌面を見せると、シンに背を向ける形でベッドに横になり、掛け布団を頭からバサッと被った。怒らせた事を楽しむようなシンの含み笑いが背後から聞こえてきて文句を投げ掛けようと思ったが、直後に、
「ま、……頑張れよ」
 という、一切揶揄を含まぬ静かな声が聞こえてきた為に、やっぱり何も言えなくなる。夜の闇に刹那に溶ける小さな小さなその声は、ボクの緊張感を掬い取ってくれた。両手でそっと、水を掬い上げるかの如く。そこでボクは、自分が緊張していたのだと知った。だけどそれもそのたった一言で和らぎ、すると一気に眠気がやってくる。ボクは目を閉じた。あんなに目を閉じるのが怖かったのに、あんなに朝を迎えるのが、怖かったのに――……



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