I love you に代わる言葉
 なんて顔してんのさ。
 ボクはそいつに冷たい視線を送る。
 そこには顔をぐしゃぐしゃにして馬鹿みたいに泣いてる『ボク』が居たんだ。
 ボクはそんな顔はしない。した事も無い。やめてくれる? 不愉快だからさぁ。
 ボクはそいつに一歩近付いた。
 すると、ボクの背後に立っていたそいつの背後に、ぼんやりと人の姿が現れた。
 アンタ誰だ、そう問おうと口を開き掛けた瞬間に、ぼんやりとしていた姿ははっきりとした。
「!」
 僅かに開いた口は閉じる事も無く。だけど、そこから言葉が洩れる訳でも無く。
 ……おねーさん……。
 それは心の中で呟かれた。
 幼い『ボク』は気配を感じたのかゆっくりと振り返った。涙で頬を濡らしたままだったけど。
 誰か解らないのかただそこに突っ立っているだけのそいつに、おねーさんは優しく微笑みかけた。しゃがみ込んでそいつの目線に合わせてから、白く綺麗な手をそっとそいつに差し出す。
 そいつは驚いて一歩引いたけど、微笑みを崩さないおねーさんに安堵したのか、やや間を置いてから、自身の手を差し出された右手の上に置いた。
 おねーさんは嬉しそうに笑って、ルージュの引かれた形のいい口唇をそっと開いた。


 ――ヒカリくん。


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