I love you に代わる言葉
「――そんな事ない。日生くんは、私にとって『光』のような存在でした。……ううん、私にとって日生くんは、『光』そのものだった」
 ボクの目を真っ直ぐに見つめながら、そう告げるおねーさん。その言葉に心を打たれ、涙が溢れそうだった。その感覚にハッとして、漸く己の意志のままに動く事が可能になり、ボクはすぐさまおねーさんから目を逸らした。結局零れ落ちた涙を、もう見られたくはなかったから。けど、咄嗟に袖で拭ってしまった事で、恐らくバレてしまっただろう。
 おねーさんは静かな口調で、言葉を続けた。
「日生くんがご両親からどんな風に言われようと、日生くんの名前が例えば『ヒカリ』でなくても、それは変わらない。日生くんと出会う事がなかったら、私の心が救われる日なんて来なかったかも知れない。だから……日生くんが存在してくれた事が嬉しいです」
 ボクはもう一度強く涙を拭うと、おねーさんを真っ直ぐに見据える。ボクがふっと笑みを零すと、おねーさんの顔面を僅かに驚きが掠めたが、その中に喜びも垣間見えた。
 ボクも、おねーさんと出会う事がなかったら、この心が救われる日なんて来なかったかも知れない。ずっと両親を、人間を、世界を、憎み続けていただろう。そうする事で存在を許していた。そうでなければ、存在を許せなかった。
 出会えて、良かった。
 好きになって、良かった。
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