I love you に代わる言葉
 ボクはおねーさんに、真っ直ぐ伝える。
 これが。
 これがボクの。
 ――……『I love you』だ。
『アイラブユー』なんて気障な台詞も、ましてや直訳の『愛しています』なんて台詞も、ボクには到底言えやしないから。愛しています、その代わりに、それをおねーさんに贈ろう。
 男のくせに情けないけど、今また、涙が溢れそうだった。何とか、笑顔を作って堪えるけど。……堪える為に笑顔を作れるようになるとは、何て、幸福な事だろう。
 おねーさんは瞠目していたけど、すぐに泣き出しそうな笑顔で、日生くん……と呟いた。絶対に意味が解っていないおねーさんを見て、ボクは笑う。やっぱり涙より先に笑顔が零れた。すると、おねーさんはきょとんと目を丸くする。
「はははっ。意味、解ってないよね?」
 問うと、おねーさんは更にきょとんとした。まぁ聞いておいて何だけど、普通、理解出来る訳がない。
「……え? え?」
 オロオロし出すおねーさんがカワイくて仕方なかった。
「――今のが、ボクの『I love you』の訳ね」
 ボクはそれだけ伝えた。それだけで、多分、解る筈だ。
『いつか……日生くんがそれを自分だけの言葉で訳せる日が来たら、大切な人……愛する人に、伝えたらいいかも知れません』
 おねーさんがボクに言ったこの言葉を、覚えて、いるなら。
 覚えていなくても、『I love you』の訳と言った時点で、何となく察しはついているかも知れない。案の定おねーさんは、恥ずかしそうに顔を俯けた。
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