I love you に代わる言葉
「……あのっ……それは……それは……」
 視線を彷徨わせながらもじもじしている。ほら、やっぱり解っている。此処で解らないと言うような態度を取れば、鈍感女を装っているだけで逆にあざとくてボクは嫌だったかも知れない。おねーさんを黙って見ていると、おねーさんはちらっと此方の様子を窺ってきた。目が合えばすぐさま逸らして俯く。ボクには緊張も羞恥も不思議と無くって、ただ目の前にいる女性(ヒト)がカワイくて思わず笑みが零れてしまった。けど、おねーさんに不信感を与えぬよう、声を出さず努める。ボクは口を開いた。
「前に一緒に図書館に行った時、その帰りにさ、『I love you』の訳をいつかボクが、それを自分だけの言葉で訳せる日が来たら、大切な人、愛する人に、伝えたらいいっておねーさん言ってたよね?」
 問うと、おねーさんはやはり覚えていたようで、
「……はい」
 と俯きながら小さく頷いた。それを確認して、ボクは言葉を続けた。
「だから、さ。さっきのは、そういう事だから」
 そう言うと、おねーさんは揺れる瞳でボクを真っ直ぐに見てきた。
「ずっとさ、好きだったんだ……おねーさんの事。シン、あいつがさ、ずっと協力してくれてた。シンにボクの気持ちがバレたのは不本意だったけど、今思うと、あいつと繋がらなければ今こうしてなかっただろうし、感謝はしてるよ。今井には、これが『恋』だって教えて貰った。あいつは執拗にボクに付き纏ってきて、最初はうざかったけどやっぱり今となってはありがたいものだった。まぁあいつは今でもうざいけどね」
 そう言ってははっと笑えば、真面目な顔してたおねーさんもふふっと笑みを零した。おねーさんは少し落ち着いたようで、静かに言った。


「……じゃあ真は、私達の想いを、間でずっと受け止めていたんだ……」


 おねーさんに意味深な笑みと言葉を向けられ、ボクは笑みを消す。
 今のはどういう意味だ……?
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