I love you に代わる言葉
「!」
不意に舞い降りる言葉は、ボクの記憶に在るものだった。
「それ……、」とボクが小さく声を漏らせば、おねーさんはふわりと笑った。
「それが……私が日生くんに贈る、『I love you』です」
なっ……じゃあ……じゃあボク達は……両想いだったっていうのか……? というか、おねーさんは大胆にもケンヤ(墓)の前でそれを伝えたのか……! あ、いや……だから……だからケンヤは、夢の中でバトンをボクに渡してきたのか……。『花恋を頼む』と……
それにしても一体いつから……シン、あいつもいつからボク達の事を……――いや、今はよそう。目の前の女性(ヒト)に、何か言葉を返さなければ。
「……ボクなんかでいいの?」
問うと、一瞬驚いた表情を見せたおねーさんだったが、すぐに笑顔で大きく頷き言った。
「日生くんがいいんです」
「……五歳も年下だけどいいの?」
「はい」
「……背、高くないけどいいの? 女は背の高い男がいいんだよね」
「ふふ。私は身長なんて気にしません」
「……あんな親の、子なのに? 同じ血が流れてるとか考えないの?」
語尾が少しだけ強い口調になってしまった。汚らわしい血を卑しめ蔑む事によって、親の罪から目を背けたいと同時に、「それでもいい」と肯定される事を本心では望んだ。おねーさんは温かい笑みを見せた。
「日生くん。自分の事も、お母さんの事も、卑しいものだなんて思わないで。日生くんはきれいです。純真です。日生くんのお母さんも、ただ、救われなかっただけ。今はまだ、救われていないだけ」
優し過ぎるその言葉に、ボクの心は激しく波打った。幸福を感じる心と、何処か憤怒にも似た気持ちが芽生えて、ボクは声を荒げた。
「――何でそんな風に言えるのさ! あの女を実際に見ただろ! おねーさんを笑いながら侮蔑するような女に、どうしてそんな事が言えるんだ……!」
「――日生くんを、産んでくれた人だもの」
「……!」
「それは同時に、私に『光』を与えてくれたようなもの」
澄み切ったおねーさんの瞳は、それが虚言でない事を物語っていて、ボクは何も言えなかった。
「だから、感謝すらしています」
おねーさんの柔らかな微笑みとその言葉は、世界で一番美しかった。
「……――大好き。生まれてきてくれて……ありがとう」
ボクの瞳から、情けなくも涙が、流れ落ちた。
不意に舞い降りる言葉は、ボクの記憶に在るものだった。
「それ……、」とボクが小さく声を漏らせば、おねーさんはふわりと笑った。
「それが……私が日生くんに贈る、『I love you』です」
なっ……じゃあ……じゃあボク達は……両想いだったっていうのか……? というか、おねーさんは大胆にもケンヤ(墓)の前でそれを伝えたのか……! あ、いや……だから……だからケンヤは、夢の中でバトンをボクに渡してきたのか……。『花恋を頼む』と……
それにしても一体いつから……シン、あいつもいつからボク達の事を……――いや、今はよそう。目の前の女性(ヒト)に、何か言葉を返さなければ。
「……ボクなんかでいいの?」
問うと、一瞬驚いた表情を見せたおねーさんだったが、すぐに笑顔で大きく頷き言った。
「日生くんがいいんです」
「……五歳も年下だけどいいの?」
「はい」
「……背、高くないけどいいの? 女は背の高い男がいいんだよね」
「ふふ。私は身長なんて気にしません」
「……あんな親の、子なのに? 同じ血が流れてるとか考えないの?」
語尾が少しだけ強い口調になってしまった。汚らわしい血を卑しめ蔑む事によって、親の罪から目を背けたいと同時に、「それでもいい」と肯定される事を本心では望んだ。おねーさんは温かい笑みを見せた。
「日生くん。自分の事も、お母さんの事も、卑しいものだなんて思わないで。日生くんはきれいです。純真です。日生くんのお母さんも、ただ、救われなかっただけ。今はまだ、救われていないだけ」
優し過ぎるその言葉に、ボクの心は激しく波打った。幸福を感じる心と、何処か憤怒にも似た気持ちが芽生えて、ボクは声を荒げた。
「――何でそんな風に言えるのさ! あの女を実際に見ただろ! おねーさんを笑いながら侮蔑するような女に、どうしてそんな事が言えるんだ……!」
「――日生くんを、産んでくれた人だもの」
「……!」
「それは同時に、私に『光』を与えてくれたようなもの」
澄み切ったおねーさんの瞳は、それが虚言でない事を物語っていて、ボクは何も言えなかった。
「だから、感謝すらしています」
おねーさんの柔らかな微笑みとその言葉は、世界で一番美しかった。
「……――大好き。生まれてきてくれて……ありがとう」
ボクの瞳から、情けなくも涙が、流れ落ちた。