I love you に代わる言葉
「私、日生くんと初めて言葉を交わした日から、こんな風になると予感していたんです」
 それは衝撃の発言だった。
「……じゃあ、ボクの気持ち知ってたの?」
 そう尋ねてみたけど、おねーさんは、
「いいえ」
 首を強く横に振り、キッパリと否定した。何だか矛盾を含んでいるような気がしなくもないが、そもそも『予感』とは、ボクの中で先刻肯定せざるを得ないと判断した一種の神秘であり、不可思議なものと言える。だから、多少の矛盾を含もうが、予感したならばそうなのだろうと、自分の中で結論付けた。
「そんな風に確かなものを感じた訳ではないのですが、この出会いで人生が大きく変化するんだろうって。……そうは思っていました。だから日生くんという存在を、別の意味でも初めから意識していましたし、日生くんがお店に来てくれるのは嬉しかったです。その時から『好き』という確かな恋愛感情を抱いていた訳ではなかったのですが、今思うと、やっぱり初めから恋の予感を感じていたのかも知れません。うまくは、言えないけれど……」
 おねーさんはそう言って自信無さげに語尾を小さくさせた。が、何となく解る、とボクは思った。確実に言える事は、ボク等は出会う運命だったんだろうという事。
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