I love you に代わる言葉
 ……――

 ……――――


 ハッと目を醒ました。
 視界に映るのは、薄暗さと見慣れた古い天井。
 男の声も女の声もしない。寧ろあるのは静寂だ。
 一度目を閉じて大きく息を吐いた。
「……夢、か……」
 ポツリと呟いた声が静寂の中に溶けていった。
 目を開けて辺りを見渡した。
 此処は自分の部屋。今何時だ? 暗闇になるまでもう少しの時間を要するだろうが、薄暗くなったところを見ると、確実に十八時は回っている。
 眠っていたのか、それもこんな時間に二時間も。
 ぼんやりとそんな事を思うが、状況を把握したところでどうと言う事は無い。ボクはまた目を閉じた。右腕で閉じられた双眸を覆う。

 ――ヒカリくん。

 そう呼んだ声は、酷く優しかった。
 日生 ヒカリ。
 これが、ボクの名だ。
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