I love you に代わる言葉
「そういえば、何も食べてないですね。日生く……じゃない、ですね……ヒカリくん、は、何か食べますか?」
 呼び慣れない名前をそれでも呼ぼうとする花恋さんがカワイかった。
「流石に腹が減ったね。でも、今は軽いものでいい。……花恋さんは?」
「私も軽いものにしておきます。もう遅いし」
 そんな何気無い会話をしていると、突然シンは雑誌をパタッと閉じ、両腕を頭の後ろで組んだ姿勢で、仰向けに寝転がった。
「――早速名前呼びかよ。あーあー幸せそうで何よりだ。けど、頼むから俺の前でイチャつかないでくれ。俺の居場所が無くなるからな」
 シンは棒読み且つ早口でそう告げると、心底呆れた顔をして目を閉じた。
「そ、そんなつもりじゃ……」
 そう言った花恋さんの頬は赤くなっていて、それを隠すようにやや俯いて答える。けど、すぐにパッと顔を上げた。
「それより……真は何か食べたの? お腹は空いてない?」
 気まずい空気を変えるように花恋さんはシンに尋ねるけど、シンは呆れた顔でこちらを一瞥すると、また天井へと顔を向け、目を閉じた。
「俺は満腹だ。ゴチソウサマデシタ」
 わざと口元をニヤつかせながらシンは言う。
 こ、こいつ……
 シンの発言に居た堪れなくなったのか、花恋さんは頬を赤く染めながら逃げるように自室へ行ってしまった。
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