I love you に代わる言葉
「アンタは何で、おねーさんがボクに好意を持っているって気付いたのさ」不意にボクは尋ねる。素朴な疑問だった。
「何だ? さっきは『花恋さん』って呼んでなかったか?」
「なっ……いちいちウルサイんだよ! 関係ないだろ……!」
 故意に揶揄を含む物言いをし、困惑するボクを見てくくっと笑うシン。羞恥を煽られ怒って見せるが、シンは更に笑うだけだった。
「ハハ、まぁいいさ。――で、質問の答えだが、そんなのねーちゃん見てりゃ解るさ。謙也さんを失って日生に会うまで、どんな男にも興味を示さなかったからな。それなのに日生の事は、俺にずっと話して聞かせてたんだぜ? 最初は、俺と同じ高校という共通点があったから話してきたんだと思ったが、日生が店に来る度に、だ。初めは楽しそうに話してたな。話す機会が増えて日生と仲良くなると、今度はそれが嬉しいと言わんばかりに話す。興味や好意がなけりゃ、普通そんなに話さねぇよ。で、ねーちゃんが興味を抱く『日生ヒカリ』の素性がどんなものか俺も興味が湧いた。まぁ前にも言ったが、保健室での会話を聞いたのは偶然だったけどな」
「……保健室で今井との会話聞いてた時、アンタどう思ってたのさ」
「こっちもねーちゃんに惹かれてんのかー、ってな感じだな。」
「あ、そう……」
 随分と軽い考えなんだなこいつ……
 シンは一呼吸置いてから、また話し出した。
「謙也さんから貰ったオルゴール、あれな、謙也さんが亡くなってから三年くらいまでだったんだ、音色を聴いてたのは。忘れようとしたのかずっと聴かなかったが、日生に会ってからまた聴くようになった。……多分、日生に興味を持つ自分を、音色で掻き消したかったんじゃねぇかと思う。謙也さん以外に惹かれる自分が嫌だったんじゃねぇかって。……それか、謙也さんに赦しを請うてのかも知れねぇな」
「……赦し? どういう事?」
「日生に惹かれる自分を赦して欲しいって意味だ」
「? 別に請わなくても悪い事じゃないんじゃないの」
「本来はな。ただ、ねーちゃんの中では、それが罪だと思ったのかもな。――ま、全部俺の憶測だからな、話半分に聞いてくれりゃいいさ」
 シンはそう言うと、再びゆっくりと目を閉じたが、「……そういえば、」とボクが思い出したように呟いた事で、スッと目を開け再びこちらを見た。
「……おねーさん、『オルゴールに問い掛けていた事があった』って。オルゴールを割ったボクに、『求める答えを貰えた』って言ったんだ」
 その時の状況を反芻しながらそれを伝えると、シンはフッと笑った。
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