I love you に代わる言葉
「あ」
 と小さな声を漏らした直後に、安堵と喜びの笑顔をこちらに向ける。ありました、そう言って花恋さんがボクに差し出してきたのは、淡い水色のシンプルな便箋と封筒だった。無地だしボクにはこれくらいが丁度いい。ボクはそれを一枚ずつ受け取ると、彼女に問い掛けた。
「あのさ……一緒に行って欲しいところがあるんだけど、いつが暇?」
「行って欲しいところ……?」
「うん。まあ、用事があって行きたいだけだから、そんなに時間使わないと思うけど」
 そう付け足すと、花恋さんは少し考える素振りを見せた。
「行く時間帯にもよるけれど……。仕事終わりでもいいのなら、明日でも。午前中やお昼頃と指定があるのなら、月曜がお休みだから……、」
「なら、明日。」花恋さんが言い終わる前に、ボクはそう言った。
「……あの、どこに行くんですか?」
「ヒミツ」
「……じゃあ、用事とは?」
「それもヒミツ。」
 薄く笑みを浮かべて答えると、不安と戸惑いが花恋さんの瞳をほんの僅か揺るがせた。
「別に怪しい所でも不気味な所でもないからさ、安心してよ」
 そんな場所に、連れてく訳がない。
 ボクがそう言うと、花恋さんは心底安心したようで、はい、と小さく返事をしながら嬉しそうに頷いた。普段、とても落ち着いていて大人なのに、こういう所は少女っぽくて年上に感じない。意外な一面をボクだけが見られた気がして嬉しくなるし、何より好きだ。
< 393 / 415 >

この作品をシェア

pagetop