I love you に代わる言葉


 ショッピングモールに到着したのが十六時四十五分だった。丁度いい時間だな、と考えながら、すぐに煌宝に向かう。関係が変わってから訪れるのは初めてで(昨日付き合ったばかりだから当たり前だけど)、向かう足取りが異様に軽い。彼女の元へ行く、という状況は、やはり嬉しいもので高揚感に包まれるらしい。
 煌宝に行くと、花恋さんとオバサンがいた。
 花恋さんはボクが来た事に気付くと、はにかみながら視線を逸らす。ボク達は特に何も変わらないと思っていたけど、こういう些細な所で付き合ってるんだなぁと実感する。
 オバサンもボクに気付き、すぐに破顔した。
「おやおや日生くんじゃないか。何だい? 花恋ちゃんに会いに来たのかい?」
 オバサンはそう言ってにんまりと笑う。それは全てを知った上での発言かと思ったが、花恋さんの反応を見るとどうも付き合った事を話した様子はなかった。なら今の発言は、オバサンの悪戯心から出たものか。
 ボク等の関係をオバサンがどう捉えているかは知らないが、ボクは得意気に、そして少し不意を突いてやろうと思い、堂々とした口振りで、
「そーだよ」
 と言ってやった。すると、オバサンはあんぐりと口を開けて硬直し、花恋さんはボッと顔を赤くした。オバサンだけ見れば、してやったりとニヤリとしただろうが、まさか花恋さんまで過剰に反応を示すと思っていなくて、少し申し訳ない事をしたなと反省するが、そんな花恋さんがカワイイとも思ってしまった。
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