I love you に代わる言葉
 オバサンはボクと花恋さんを交互に見やり、酷く驚いた様子で、まさか……と声を漏らした。
「その……まさか、です」
 と、酷く恥ずかしそうに俯きながら、小さな小さな声で花恋さんは答える。オバサンはそれで理解したらしく、開いた口が塞がらないといった様子だった。けど、すぐに何処か納得した風でもあった。
「そうかいそうかい。ひょっとしたら二人はくっつくんじゃないかなあと思ってたんだよ。けど、まさか本当にくっつくとはねぇ」
 オバサンは感心したように声を出した。それに対して花恋さんは、今がとても幸福であると言わんばかりに目を細めて微笑んだ。ボクなんかを彼氏に選び、幸せそうに笑う彼女を見て、心が痛む程の幸福感を覚えた。嬉しくて、ボクも僅かに笑みを作る。するとふと、オバサンがこちらを凝視している事に気付く。な、何なのさ、と冷たく問えば、オバサンはとても穏やかな笑みを向けてボクに言った。
「日生くん、素敵な恋をしたんだねぇ」
 と。
 ボクは驚いて目を見開く。言葉が何も出てこなかった。そんなに自分は以前と違うんだろうか、という疑問とくすぐったい感覚が心内を領す。けど、そうかも知れない、と己の中ですぐに答えは出た。
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