I love you に代わる言葉


 それからボク等は、寄り道などせず真っ直ぐ『ボク等』の家へと帰宅した。二十時を過ぎているというのに、今井はボクが家を出る前と同じでそこにいて、本日二度目の質問攻めに遭った。「帰ったら教える」と言ってあったし、鬱陶しさに顔を顰めながらも一応質問には答えてやった。
 手紙には何て書いたんだ? と聞かれたが、それだけは断固として教えなかった。今井もその辺は弁えているらしく、それについては深く追求してこなかった。……が、突然目をギラっと光らせ、鋭い目付きでボクを射抜くように見ると、……本当に手紙と石を置きに行っただけなのか? おいどうなんだ。本当にそれだけか!? としつこく聞いてきて、そろそろ本気で始末しようかと考えた。
 そんな時、不意にシンが立ち上がって酷く真剣な目付きで今井に視線を投げ掛けた。そして今井の肩に手を置き、黙って首を横に振る。その行動が今井の発言を制するものと思いきや、――今井、野暮な事聞くんじゃねぇ、と、別の意味で発言に制止をかけた。こいつ等何想像してるんだよ……とボクはわなわなと震えキレそうになったが、何考えてるの真……!! と頬を染めた花恋さんがシンを平手打ちした事で、ボクの怒りは一瞬で霧散した。これにはボクも今井も、文字通り、ぽかん、だ。痛ってぇ……俺、こういう役回りだったか……? と頬を押さえながらぼやくシンを見て、思わずぷっと笑いが零れた。



 それから四人で夕食を食べ、それを済ますと各々好きな事をしていた。何故か今井は泊まるのが当たり前みたいな感じで普通にゲームをしているし、シンもそれを観ながら楽しんでいるようだった。
 ボクはゲームに興味がなかったから、リビングで一人、本を読もうとしていた。すると花恋さんが自室から出てきてボクの傍に歩み寄る。そして遠慮がちに言った。
「……よかったら、少しお散歩しませんか?」
 勿論ボクは、二つ返事で承諾する。シンの部屋にいる二人に報告するとまた煩くなると踏んで、ボク等はこっそり家を抜け出した。



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