I love you に代わる言葉
*
近所をぐるりと歩いた後、昨晩と同様公園に行く。そして昨晩と同様、ベンチに二人腰掛けた。風は冷たく、少し湿り気を帯びていた。さらさらと、ボク等の髪を揺らす。
「……手紙、読んでくれるといいですね」
沈黙を震わし、花恋さんは地面に視線を向けながらそう言った。ボクは何も答えなかった。
「……内容は、やっぱり、……ひみつ?」
今度はボクの方に顔を向けて尋ねてくる。二言目は完全にボクの返答を求めたものだろう。うん、と一言ボクは返す。それを聞いて、花恋さんは微笑んだだけだった。
「あの家に、来るかな」
ぽつり、気弱な発言を零してしまった。
紙が変色するまで、手紙はあそこに置かれたままになるかも知れない。そんな風に考えて、ほんの僅か嘲笑した。
「きっと、来ます」
優しく呟かれた言葉。ボクは隣を見る。花恋さんは正面を見て優しい微笑を浮かべていた。
「“あれ”から、一度はきっとあの家にヒカリくんの様子を見に行ったんじゃないかなって、私は思います。荷物のなくなった部屋を見て……今、もしかしたら探しているかも知れない。そして、いつかヒカリくんが戻るんじゃないかって、何度も、あの家に様子を見に戻るかも知れない」
あれ、とは……土砂降りの雨の日、交差点で会った日の事を言っているんだろうか。まあ、何でもいいや。仮に花恋さんの言う通りだとしても、ボクはやっぱり、赦せない。だけど、そうだったらいいと心の何処かで願う自分もいる。今のボクは、恐らく憎悪と愛情の狭間で揺れているんだろう。
「……あの家に、帰りたいですか?……」
不安に揺れる瞳でそう尋ねられ、ボクは嬉しくなった。だから少し意地悪を言ってみる。――帰って欲しい? と。すると花恋さんは、強く首を振って否定した。そして、
「……帰って、ほしくない……」
小さく、寂しそうな声でそう呟く。それがあまりにカワイくて笑みが零れてしまった。
近所をぐるりと歩いた後、昨晩と同様公園に行く。そして昨晩と同様、ベンチに二人腰掛けた。風は冷たく、少し湿り気を帯びていた。さらさらと、ボク等の髪を揺らす。
「……手紙、読んでくれるといいですね」
沈黙を震わし、花恋さんは地面に視線を向けながらそう言った。ボクは何も答えなかった。
「……内容は、やっぱり、……ひみつ?」
今度はボクの方に顔を向けて尋ねてくる。二言目は完全にボクの返答を求めたものだろう。うん、と一言ボクは返す。それを聞いて、花恋さんは微笑んだだけだった。
「あの家に、来るかな」
ぽつり、気弱な発言を零してしまった。
紙が変色するまで、手紙はあそこに置かれたままになるかも知れない。そんな風に考えて、ほんの僅か嘲笑した。
「きっと、来ます」
優しく呟かれた言葉。ボクは隣を見る。花恋さんは正面を見て優しい微笑を浮かべていた。
「“あれ”から、一度はきっとあの家にヒカリくんの様子を見に行ったんじゃないかなって、私は思います。荷物のなくなった部屋を見て……今、もしかしたら探しているかも知れない。そして、いつかヒカリくんが戻るんじゃないかって、何度も、あの家に様子を見に戻るかも知れない」
あれ、とは……土砂降りの雨の日、交差点で会った日の事を言っているんだろうか。まあ、何でもいいや。仮に花恋さんの言う通りだとしても、ボクはやっぱり、赦せない。だけど、そうだったらいいと心の何処かで願う自分もいる。今のボクは、恐らく憎悪と愛情の狭間で揺れているんだろう。
「……あの家に、帰りたいですか?……」
不安に揺れる瞳でそう尋ねられ、ボクは嬉しくなった。だから少し意地悪を言ってみる。――帰って欲しい? と。すると花恋さんは、強く首を振って否定した。そして、
「……帰って、ほしくない……」
小さく、寂しそうな声でそう呟く。それがあまりにカワイくて笑みが零れてしまった。