I love you に代わる言葉
 こんな日が、一生続けばいいと願う。生まれて初めて、人を愛し、守りたいと思った。人に愛され、守られ、生まれて初めて世界は美しいと思えた。美しいと、知った。人は『人』によって傷付けられるが、それを救うのもまた、『人』なんだろう。
 花恋さんに出会って世界は変わり、ボクの心は随分と救われた。孤独だったのに、友を得た。何だかんだ言っても、ボクはそいつらが嫌いじゃなかった。一緒に居て、心地良く感じられた。
 世界はボクを救ってくれた。それならば世界は、ボクの母親も救ってくれるだろうか。
 憎いのにそれでも、どうしているか気にする自分がここにいて、それを忌々しく思う。でも、隣でふわりと笑う花恋さんが、きっとボクの全てを肯定してくれるんだろう。
 ボクは天(そら)を見上げた。今日も無数の星が瞬いていて、ボクは柄にもなく星に願ってみた。
 どうか、幸福を……――と。
 ただ、それだけ。誰に、なんてそれはよく解らない。大事な人は一人じゃないから。
 欲張りだけどもう一つ、ボクは願った。
 願い終えると、それを見計らったかの如く、花恋さんはスッと立ち上がった。
「――……そろそろ帰りましょうか。外に出た事が二人にバレてしまうかも知れないし」
 掛けられた言葉に更に驚く。ただの偶然だろうが、まるで願いを届ける為に来たみたいだった。ボクは立ち上がる事で無言の返事をする。そして二人並んで、家路を辿る。その道中、もう一度天を見上げ、星を見た。隣で同じように星空を見上げる花恋さんがボクの視界の隅に映った。
 もう一つの願いは。
 幸福の隣で願ったもう一つの願いは、……叶えられるだろうか。
 手紙に書いた一言が、綺麗とは言い難いボクの書いた文字が、母親に……届いて欲しいという願い。
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