I love you に代わる言葉


 六限目終了のチャイムが鳴り響いた。即座に席を立つ者、欠伸をする者、伸びをする者、机に突っ伏して寝る者、各々異なる行動を視界に捉えたが、ボクがする行動は『即座に席を立つ者』と同じだった。けれどその後の行動は、きっとクラスでボクだけしかしない行動。
 帰り支度を整えて(整える程の荷物はないけど)、さっさと教室を出る。終礼は面倒だから出ない。
 今日は何処に寄ろう。本屋にでも行こうか。そこで立ち読みでもすれば時間は潰れる。何も考えなくて済む。
 そんな事を考えながらスタスタと廊下を歩く。下駄箱まで行くと近くに今井達が屯している光景が映った。一瞬、こちら側を向いて立っていた今井と目が合った。何か言いたそうな目をしていたが面倒だから無視した。
 此処から一番近い本屋は何処だったっけと、下駄箱から靴を取り出しながら考える。
 それを思い出し乱暴に靴を地面に落とした。
 くそっ。ショッピングモール内の本屋しか無い。行くのをやめるか? だけど本屋と煌宝じゃあ位置する階も違うし距離もある。おねーさんがもし出勤していたとしても会う事は無いだろう。そもそも今日が出勤日とは限らない。
 そこまで思考して盛大に溜息をついた。
 不機嫌を露にしているものだから、同じく帰宅しようとボクの近くで靴を履こうとしていた気の弱そうな男が、一瞥を寄越しそそくさと小走りで出て行った。
 それを見て心の中で舌打ちをする。
 視線を落とした先では、乱暴に落とした所為で片方の靴が裏返しになっている光景が映った。屈んでそれを直す。
 ああくそっ、苛々する。



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