I love you に代わる言葉
*
他の客が来店した為、ボク達は帰宅する事にした。
「それじゃ、また。日生くん、今井くん」
その声にボクはやはり会釈するでもなく返事をするでもなく、ただおねーさんへ視線を送るだけだった。
今井は「え……」と小さく呟ききょとんと不思議そうにおねーさんを見ていたようだが、その表情は刹那に消え去り「また来まっす!」と元気よく返事をしていた。
呼び掛ける名前の順番が、ボクの方が先である事。そんな些細な事ですら喜びを感じる。誰も気付かない様な、本当に些細な事だ。
心の変化に動揺と戸惑いを覚えるが、それもまた以前と意味合いが異なる事に気付く。
変化とは素晴らしく恐ろしいものだと思う。
「……おかしい」
隣から呟かれた言葉に思考は遮られた。隣を歩く今井を見やれば、顔を顰め何やら考え込んでいる。
「何がおかしいのさ」
「俺、あの人に名前名乗った覚えがねーんだよ。何で知ってんだ」
ああ、さっき不思議そうにしていたのはそれでか。真剣に考え込んでいるから何かと思えば。
ボクは興味も示さず前方へ顔を向け、素っ気無く答える。
「アンタが覚えてないだけだろ」
「そこまでバカじゃねーよ」
「万引き見付かって叱られた時にオバサンに名乗ったんじゃないの」
「あー、そうかも」
真剣に考え込んだ割りに答えは呆気なく出た。
横目で今井を見れば、言葉とは裏腹に納得の出来ていない表情だった。
だけどボクは、どうでもいい事だと片付けて然して気に留めなかった。
他の客が来店した為、ボク達は帰宅する事にした。
「それじゃ、また。日生くん、今井くん」
その声にボクはやはり会釈するでもなく返事をするでもなく、ただおねーさんへ視線を送るだけだった。
今井は「え……」と小さく呟ききょとんと不思議そうにおねーさんを見ていたようだが、その表情は刹那に消え去り「また来まっす!」と元気よく返事をしていた。
呼び掛ける名前の順番が、ボクの方が先である事。そんな些細な事ですら喜びを感じる。誰も気付かない様な、本当に些細な事だ。
心の変化に動揺と戸惑いを覚えるが、それもまた以前と意味合いが異なる事に気付く。
変化とは素晴らしく恐ろしいものだと思う。
「……おかしい」
隣から呟かれた言葉に思考は遮られた。隣を歩く今井を見やれば、顔を顰め何やら考え込んでいる。
「何がおかしいのさ」
「俺、あの人に名前名乗った覚えがねーんだよ。何で知ってんだ」
ああ、さっき不思議そうにしていたのはそれでか。真剣に考え込んでいるから何かと思えば。
ボクは興味も示さず前方へ顔を向け、素っ気無く答える。
「アンタが覚えてないだけだろ」
「そこまでバカじゃねーよ」
「万引き見付かって叱られた時にオバサンに名乗ったんじゃないの」
「あー、そうかも」
真剣に考え込んだ割りに答えは呆気なく出た。
横目で今井を見れば、言葉とは裏腹に納得の出来ていない表情だった。
だけどボクは、どうでもいい事だと片付けて然して気に留めなかった。