I love you に代わる言葉
 小さく溜息をついた。
 ……何かもう、どうでも良くなってきた。
 正直言えばあんな馬鹿を迎え入れるなんて御免だ。家も、立派なものではないし。
 他人が簡単に足を踏み入れられるような場所でもなければ、人を簡単に迎え入れられる場所でもない。そもそも迎え入れる体勢が全くなっていないし、いっそ散らかって生活感のある家の方がマシだと思う。とてもじゃないが来客の歓迎は出来かねる。
 まぁ、その逆だとしてもボクはあいつを歓迎はしない。仕方なく入れてやるだけだ。
 譲歩の理由は二つ。単純なものだ。
 一つは単に面倒だった。そしてもう一つは、しつこさで多分ボクはあいつに勝てない。それだ。
 昨日の事で悟った。あいつは軽くあしらおうが突っ撥ねようが蹴散らそうが殴り倒そうが、こうと決めたら何が何でもありとあらゆる手段を使いその意志を貫くだろう。それこそ始末しても生き返って成し遂げそうだ。いや、死んだとしても幽霊になって、ボクが家に帰れば普通に居座っていそうだ。
 今井のそんな姿を想像し、一気に疲労感が押し寄せた。
 段々とあいつのペースに巻き込まれている気がして、思わず顔を顰めた。



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