I love you に代わる言葉
*
「へー……ここがお前の家?」
眼前に立ちはだかる得も言えぬ負の空気を纏った襤褸のアパートを見上げ、今井はピタッと足を止めた。それにつられる様にボクも足を止める。
半歩後ろに居る今井を見れば、口を半開きにして意外なものを見たという風な顔をして突っ立っている。何を意外そうにしているのか気にならないでもないが、ボクは追求するでもなく問いに答えるでもなくただ素っ気無く「行くよ」と言って正面を向いた。
ボクの家は二階だ。
カンカンといかにもな音を立てる階段を上がって、突き当たりの部屋まで行く。付いて来ているのは解るが、途中幾度も不自然に背後の足音が途絶える為、気になって振り返ると、今井は無言で呆けるようにアパート全体を眺めていた。
「――ここ。早く来なよ」
玄関扉の前まで来ると、ボクは急かす様に声を掛けた。
「あ、ああ」
今井はそう言って、歩みを少しだけ速めこちらへやって来る。
「何をそんなに眺める必要があるのさ。別に珍しくもないだろ」
鍵を開けながら冷たい口調で言えば、「いや、まぁ……意外だったからよ」と言う。
声の調子から察するに、きっともう少し立派な家を想像していたんだろう。
「へー……ここがお前の家?」
眼前に立ちはだかる得も言えぬ負の空気を纏った襤褸のアパートを見上げ、今井はピタッと足を止めた。それにつられる様にボクも足を止める。
半歩後ろに居る今井を見れば、口を半開きにして意外なものを見たという風な顔をして突っ立っている。何を意外そうにしているのか気にならないでもないが、ボクは追求するでもなく問いに答えるでもなくただ素っ気無く「行くよ」と言って正面を向いた。
ボクの家は二階だ。
カンカンといかにもな音を立てる階段を上がって、突き当たりの部屋まで行く。付いて来ているのは解るが、途中幾度も不自然に背後の足音が途絶える為、気になって振り返ると、今井は無言で呆けるようにアパート全体を眺めていた。
「――ここ。早く来なよ」
玄関扉の前まで来ると、ボクは急かす様に声を掛けた。
「あ、ああ」
今井はそう言って、歩みを少しだけ速めこちらへやって来る。
「何をそんなに眺める必要があるのさ。別に珍しくもないだろ」
鍵を開けながら冷たい口調で言えば、「いや、まぁ……意外だったからよ」と言う。
声の調子から察するに、きっともう少し立派な家を想像していたんだろう。