I love you に代わる言葉
*
それから三十分程経過したか。
目だけを動かしてチラッと今井を見れば、奴はただ教科書を見ているだけだった。それで勉強になるのかと指摘すべきか迷ったが、口に出してやるのは面倒でやめた。勉強になると思っている辺りやっぱり馬鹿なんだと思わせる。……いや、よく見ると、視線が全く文字を辿っていない。教科書を開いているだけでどうやら上の空みたいだ。まぁ奴が勉強を真面目にしようがしまいがボクには関係無い。そう思い再び本に目を落とすと、ふと沈黙を破り今井が口を開いた。
「――なぁ、」
本から視線を外し、今井を見る。
今井は開いていた教科書を裏返して置くと、こちらを向いた。
「お前、一人暮らしなのか?」
真っ直ぐこちらを見据えて尋ねてくる。もしかしてさっきからそれを考えていたのか? 他人の家庭の事情などこいつには関係無いのに何とも呆れる。
「アンタに関係無いだろ」
本に目を落としながら素っ気無く答える。が、今井は無遠慮に視線を投げ掛けてくる。本に視線を向けていてもそれを感じるから不快だ。
「親は?」
ボクは思い切り眉を寄せ、怒気を放つ。
「だからアンタに関係無いだろ」
やや強い口調で言えば、今井はそれ以上追及してこなかった。それが少々意外ではあったが、こんな風に言えば何かあったんだろうと今井でも察する事が出来たんだろう。渋い顔をしてはいたけれど気付かぬフリをして放置した。
とにかく誰にも家庭の事には触れて欲しくなかった。奴等の話などしたくもない。思い出したくもない。消えてしまえばいい。
それから三十分程経過したか。
目だけを動かしてチラッと今井を見れば、奴はただ教科書を見ているだけだった。それで勉強になるのかと指摘すべきか迷ったが、口に出してやるのは面倒でやめた。勉強になると思っている辺りやっぱり馬鹿なんだと思わせる。……いや、よく見ると、視線が全く文字を辿っていない。教科書を開いているだけでどうやら上の空みたいだ。まぁ奴が勉強を真面目にしようがしまいがボクには関係無い。そう思い再び本に目を落とすと、ふと沈黙を破り今井が口を開いた。
「――なぁ、」
本から視線を外し、今井を見る。
今井は開いていた教科書を裏返して置くと、こちらを向いた。
「お前、一人暮らしなのか?」
真っ直ぐこちらを見据えて尋ねてくる。もしかしてさっきからそれを考えていたのか? 他人の家庭の事情などこいつには関係無いのに何とも呆れる。
「アンタに関係無いだろ」
本に目を落としながら素っ気無く答える。が、今井は無遠慮に視線を投げ掛けてくる。本に視線を向けていてもそれを感じるから不快だ。
「親は?」
ボクは思い切り眉を寄せ、怒気を放つ。
「だからアンタに関係無いだろ」
やや強い口調で言えば、今井はそれ以上追及してこなかった。それが少々意外ではあったが、こんな風に言えば何かあったんだろうと今井でも察する事が出来たんだろう。渋い顔をしてはいたけれど気付かぬフリをして放置した。
とにかく誰にも家庭の事には触れて欲しくなかった。奴等の話などしたくもない。思い出したくもない。消えてしまえばいい。