愛してもいいですか
“仕事は出来るけれど、普段はワガママばかりの社長”
それが社内に広がる、架代さんのイメージだ。
というのも、神永さんが秘書をしている頃から、『あれして』『これして』と秘書を使う姿がよく見られていたこと。それと、きつそうな顔立ちと“親会社の社長の一人娘”というイメージからくるもの。
まぁ確かに、俺も実際あれこれと使い走りさせられてはいる。けど、仕事のことで社長が秘書を使うのは当たり前だし、それ以外のワガママは、俺がどこまで言うことを聞けるのか秘書として試しているのだろう。
けれどそんなことを知らない周りは誤解して、上層部は『ワガママな娘だ』と笑う。社員は『機嫌を損ねて処罰されでもしたらたまらない』と避けるようになる。
結果として、彼女は周囲に避けられる存在になる。
……せめてもう少し愛想が良ければ、周りとも打ち解けられるのに。変に真面目な架代さんは、真剣になればなるほど顔が険しくなって笑う余裕がない。
笑えば可愛いと思うんだけどなぁ。
思い出すのは先日の、星空を見上げる彼女の笑顔。