愛してもいいですか



「ところで、宝井社長はまだ独身と聞いたが」

「はい。仕事で手一杯で」

「若くてそれだけの見た目でもったいない……なら社長なんぞさっさと下の者に譲って、俺の愛人にでもならんか?」

「ふふ、柴田社長ってばまたご冗談を」

「冗談?俺は本気だぞ」



どう聞いても冗談にしか聞こえない話も本人は本気であったらしく、受け流そうとした架代さんを舐めるような視線で見た。


……このセクハラオヤジ。

そういえば神永さんが、『社長をそういう目で見ている取引先もある』って言っていた気がする。人の会社の社長に愛人になれ、なんて、馬鹿にしているとしか思えない。



「なに、困らん程度に金はやろう。折角の美人だ、金を払ってでも傍に置いておきたい。それになにより、夜のほうも満足させてくれそうだしなぁ」

「っ……!」



さらに言われた言葉に、さすがの俺もカチンとくる。



金?夜のほう?どれだけ彼女を馬鹿にすれば気が済むのか。

デザイン会社とイベント企画会社、取引先同士という同等の立場にも関わらず、女でありまだ若いという点からこうして軽んじられている。そのことに思わず、柴田社長を鋭く睨み声を発しかけた。

けれど、そんな俺に当の本人である架代さんは至って冷静に茶碗を手にご飯を食べる。



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