愛してもいいですか
「折角のお誘いですけど、お断りさせて頂きます」
そして躊躇いなく、バッサリと断った。
「社長の夜のお相手より、仕事のほうが楽しいですから」
「なっ……!」
箸を動かし食事を続けながら言ってのけるその言葉に、まさかそんな断り方をされるとは思わなかったのか、柴田社長は不機嫌そうに顔を歪める。
「ふ、フン。偉そうにしおって……所詮親の七光りが」
「あら、柴田社長。このご時世七光りだけでは会社経営なんてやっていけませんよ。現にそちらの系列会社、息子さんに任せたら業績悪化で立ちいかなくなったそうで」
「な、なんでそれを……!」
「会社同士のコミュニケーションを密にすれば、簡単に話は入ってくるものですよ」
にこ、と微笑みどぎつい一言を言う架代さん。その笑顔は、正直怖い。
「愛人探しより先に、息子さんに会社経営のイロハを教えて差し上げたほうが良いんじゃないですか?じゃないと、後を継いだ後にSBTファクトリー自体も傾きかねませんよ?」
「なんだと!?小娘が生意気をっ……」
容赦無く言う架代さんに、柴田社長は顔を真っ赤にし声を荒げ立ち上がる。
掴みかかりかねないその勢いに向こうの秘書も止めかけ、咄嗟に俺も架代さんを庇うようにその姿の前へ立った。