愛してもいいですか
って私、また怖がらせている?もっとにこやかに、にこやかに……。
そう思うものの以前のように上手く上がらない口角に、ならばいっそと私は自らの両手で口の両端を持ち上げ、変な顔をしてみせた。
「えっ!?しゃ、社長!!?」
「ごめんね、すぐ怖い顔になって。この通り怒ったりしてるわけじゃないからさ」
「あ、はい……」
驚く彼の顔が少しおかしくて、へへ、とつい笑った私に、それまで緊張ばかりだった前田さんも少し肩の力を抜いたようにして笑う。
少し和らいだその場の空気に、私は頬から手を離すと、まっすぐに彼の目を見た。
「私は、あなたのデザインを見て、あなたを選びました。だから自信を持って、自由にコンテストに挑んでください」
「社長……」
「あなたの新たなひらめきに期待しています。頑張ってね」
「……はい!ありがとうございます!」
心から思う気持ちだから、きちんと伝わるように。言葉に表す私に、彼は元気良く頷くと頭を下げ社長室を後にした。
バタン、と閉じたドアに息を吐くと隣に立つ日向はふっと笑う。
「社長らしい、大変頼もしいお言葉で」
「そ、そう?ちゃんと言いたいこと伝えられてた?」
「えぇ、バッチリです。でも女性としてあの顔はまずいと思いますけど」
「なっ!」
それは先程の口の両端を持ち上げた、変な顔のことを指しているのだろう。
おかしそうに笑う日向をキッと睨みつけながら、手元の書類の確認作業に移る。