愛してもいいですか
「でも正直、いつもと雰囲気があまりにも違うので驚きました」
「そ、そう?」
「えぇ」
すると神永は、私の耳に下がったスワロフスキーの光るピアスを指先でそっと揺らす。
「でもそうですよね、日向があれだけ架代社長を思って選んだドレスが似合わないわけがない」
日向が、私を思って……。
ドレス一枚くらい、なんとなくで選んでくると思っていた。でも時間をかけて、頭を悩ませて、選んでくれたんだ。
『架代さんにピッタリのドレスを選んで差し上げます』
あの言葉、通りに。
「すみません、戻りました」
「日向、」
話していると電話を終えたらしい日向は急ぎ足で戻ってくる。
「日向も戻ってきたことですし、私はこれで」
「はい、神永さんありがとうございました」
「神永、またね」
それと入れ替わるように、神永は小さく頭を下げ人と人の間へと消えて行った。
「電話、大丈夫だった?」
「えぇ。残業中の社員からの確認でした」
ふぅ、と一息つき、少し暑そうにしながら首元のネクタイを整える日向に、高めのヒールを履いてもまだ少し高い位置にあるその横顔を見上げた。
思えば日向は、いつも力を貸してくれる。へらへらと、なんてことない笑顔と一言で私を変えてくれる。
それはいつも、“私の為”に。
その存在はすんなり心に入り込んで、ちゃっかり居座る。なんて腹立たしい男。……だけど。