愛してもいいですか
「架代さん、コピー機使えます?」
「使えるに決まってるでしょ、バカにしないで」
「いえいえ、バカにしているわけではなくてですね?コピー機新しいのに変わったから……ほら、複数コピーの際はここのボタンで」
説明をしながら日向は、自分とコピー機の間に私を挟むようにして立つ。後ろから軽く抱き締められる形で接する体に、思わず心臓がドキ、と音を立てた。
耳の上から降る、低く優しげな声。ボタンを差す、長く綺麗な指先。ひとつひとつが、彼を意識させる。
「やっ……やっぱり日向がやって!コピー!」
「へ?あ、はい」
その意識を誤魔化すように、私は彼の体を押し退け、コピーを任せると日向から離れた。
「そういえば、急なんですけど今日の終業後って何か用事はありますか?」
「え?特にないけど……」
「よかった。でしたらぜひ、食事でもしようとのことです」
話しながら日向は慣れた様子でコピー機を操作し、機械は印刷を始める。