愛してもいいですか
それから時間は流れ、迎えた夜。少し長引いた会議のせいで約束の時間に遅刻した私と日向が急ぎ足でやって来たのは、父の会社近くにある和食料理屋。
「いらっしゃいませ、何名様ですか?」
「予約の宝井ですけど」
「宝井様……あぁ、はい。先にご来店された二名様が奥のお座敷にいらっしゃいますので、どうぞ」
店員に案内されるまま、そこそこの客入りで賑わう広い店内の奥にある個室へと入る。
「おぉ、ようやく来たか。架代」
「お父さん」
そこにいたのは、がっちりとした体つきに暗めの色をした髪、顎に髭を生やした私の父、宝井英三だった。自分の親ながらも、相変わらず五十五歳には見えない若々しい見た目をした人だと思う。
口元と目尻にシワを寄せ笑うその手には、すでにビールグラスが持たれている。
「もう飲んでるの?相変わらずの酒好きね」
「すみません架代社長、少し待たれてはいかがかと止めたのですが……」
「来るのが遅いお前たちが悪い!ほら、さっさと座らんか」
お父さんの隣で苦い表情を浮かべる神永に、私と日向は向かい合うように座った。