愛してもいいですか
「宝井社長、遅くなりすみませんでした。会議のほうが少々長引きまして」
「はは、大丈夫だ。飲み物はなにがいい?」
「あ、自分はウーロン茶で……架代さんはどうしますか?」
「私は梅酒で」
「梅酒ですね。すみません、注文お願いします」
丁度料理を運びに来た店員は、注文を受けると手早く部屋を出て行く。テーブルの上には刺身や天ぷらなど、豪華な食事が並べられた。
「なんだ、日向くんは酒は飲まないのか」
「はい、運転がありますので」
「たまには運転くらい架代にやらせたらどうだ。どうせいつも運転手やらされてるんだろう?」
「いえ、自分もまだ死にたくありませんから!」
お父さんの前でも構わずいつものように堂々と言う日向に、私はテーブルの下、無言でその手をギュッとつねる。
『いっ!』と痛そうに顔を歪めた日向に、お父さんはおかしそうに笑った。
ったく、さすがにそこまで運転下手じゃないわよ!……たぶん。
それからほどなくして運ばれてきた飲み物で軽く乾杯をすると、ようやく食事会は開始される。